4期16年の長きにわたって秋田市政のトップを務めた穂積前市長と、今年4月に就任した沼谷新市長の間には「対面拒否」とも言える異例の引き継ぎがあった。
通常、市長職の引き継ぎでは前後任の直接対話が慣例とされるが、穂積前市長は沼谷氏との対面を頑なに拒否。「文書での引き継ぎ」という異例の形式に終始したという。
佐竹前知事と和やかに対面での引き継ぎを行った鈴木健太新知事とは対照的な船出となった。
「穂積さんはとにかく沼谷氏が後任になることを嫌がっていた」と市役所関係者は証言する。市長選では敗北を喫したものの、その後も副市長らに「沼谷氏に協力するな」という”呪い”を残したとの声も。
去る者去れぬ者…副市長の板挟み深刻
沼谷市政の船出も順風満帆とはいかない様子だ。4月30日の会見で、沼谷市長は鎌田潔副市長が6月末で退任することを明らかにした。
「見るからに疲れていた」と複数の目撃証言がある鎌田副市長。実は穂積前市長の5選目出馬にも否定的だったとされ、「もう穂積はダメだ」という市内の声と、前市長からの「沼谷にだけは勝たせたくない」という圧力の間で苦悩していたという。
一方、柿﨑武彦副市長は「当面の間」留任するとされたが、その時期は未定。新市長と前市長の板挟みに苦しむ市幹部たちの姿が浮かび上がる。
本紙の取材によれば、穂積前市長は2021年の市長選で沼谷氏含む三つ巴となった武内氏に後を託したかったという証言も。「武内氏なら文句はないが、沼谷だけは認められない」というのが穂積氏の本音だったようだ。
議会対策に悩む新市長
秋田市議会36人中、27人が前市長を支持していた手前、新副市長人事も難航必至とみられる。空席となる副市長ポストには市役所内部からの昇格のほか、現職議員の名前も取り沙汰されているが、「いずれにしても議会の同意が得られるかが最大の課題」(市政関係者)だ。
新市長の沼谷氏は記者会見など沼谷流を早くも採り入れている。
しかし、今後も穂積色を一掃し、独自色を出せるかどうか。人事が足かせとなり、思うように前に進めないというのが可能性もありそうだ。
「16年の怨念」か「将来への警鐘」か
「穂積前市長の行動は、16年の怨念なのか、それとも沼谷市政への警鐘なのか」と問いかける声もある。いずれにせよ、秋田市政の裏側では、表面上の政策論争とは別の、生々しい人間関係が渦巻いているようだ。
秋田市民の選択で決まった新市長。だが、その市政運営が順調に進むかどうかは、まだ見通せない状況が続いている。